企業の研修制度を見ると、よく「OJT(On the Job Training)」という言葉を目にします。
OJTとは、職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して 実際の業務を通じて、知識・技術・技能・仕事の姿勢を指導する方法 を意味します。
ただ実際にIT業界で働いてみると、そのイメージとはだいぶ違う現場も多くあります。

今回は、SES企業で働いたときの、僕の実体験を踏まえながら、
大手企業、受託開発(Sler含む)を含む「IT業界のOJTのリアル」 をまとめていきます。

● OJTの特徴

OJTは 個別に対応する指導方法 なので、

  • 実務に即した具体的な学びが得られる
  • 定着しやすく、教育効果が高い
  • 現場のリアルな判断力が身につく

など、教育として非常に優れています。
反面、

  • 教育担当の負担が大きい
  • 効率が悪くなりやすい
  • 教える人によって質がブレる

というデメリットもあります。

● Off-JTとの比較

一方、Off-JTという言葉があります。

  • 多人数に一度に教えられる
  • カリキュラム化しやすく効率的

というメリットがある一方、

  • 全員の理解度を揃えるのが難しい
  • 実務感覚に結びつきにくい

という弱点も抱えます。

● 理想は「OJTの充実」

理想形を挙げるなら、やはり

実務現場で先輩が適切にフォローする「真のOJT」

が最も教育効果が高いとされています。

しかし――
ここからが本題であり、多くの人が感じている部分。

IT業界のOJTの現実は、この理想とかけ離れています。


▼ IT業界のOJTの現実

① SES企業のOJT

僕がSESにいた頃は、このパターンでした。

  • マニュアルと課題集が渡される
  • 小さな問題を順番にこなしていく
  • クリアすると「チェック」や「判子」がつく
  • すべて終えたらOJT終了(実務はまだ見ていない)

という 「研修っぽい作業」=OJT という扱い。

先輩が横で付き添って教えてくれるような「人による育成」はありませんでした。
実際、この形のOJTはSESでは一般的です。

理由は単純で、営業担当が見習いエンジニアを客先企業に配属させるまでの「つなぎ」で教育するからです。少し乱暴な言い方になりますが、配属先が決まるまでは売上が立たないので、その期間は研修っぽいことをさせておこう、ということなのです。

② 大手企業のOJT

大手になるほど、技術ドキュメント、教育体系、相談窓口などが整備されています。
しかし、ここにも現実があります。

  • 先輩も自分の仕事で忙しい
  • 返答はSlackで翌日
  • 丁寧にレビューしてくれる文化は現場次第

つまり、

「資料は豊富だが、人が教える構造は薄い」

というパターンが実際には多いです。

③ 受託開発(Sler含む)のOJT

受託・Slerは 現場による差が非常に激しい のが特徴です。

●(A)育成に本気なチーム

  • コードレビュー
  • 設計思想の説明
  • 進捗に応じたタスク調整

ここまで丁寧に育ててくれる会社もあります(数は少ないですが存在します)。

●(B)忙しすぎて新人に構えないチーム

こちらの方が現実的に多く、

  • ドキュメントだけ投げられる
  • 「まず調べて」「ググって」で終わる
  • 軽いバグ対応から実務スタート
  • 覚えるかどうかは本人次第

という状態になりがちです。

案件ごとに動くため、配属先のチーム文化次第でOJTの質が180度変わります。


▼ なぜIT業界で「理想のOJT」が成立しにくいのか?

理由は明確です。

● ① 教育担当も本業が忙しい

エンジニアは常にタスクを抱えており、
新人に張り付いて教える時間が取れない。

● ② 育成は売上にならない

会社にとって優先度はどうしても下がりがち。

● ③ プログラミングは「教える側の技術」も必要

専門知識を言語化して伝えるのは難しく、全員が上手いわけではない。

● ④ 入れ替わりが激しく教育文化が定着しにくい

特に受託・SESはメンバー入れ替わりが速く、教育ノウハウが蓄積されにくい。


▼ まとめ

  • OJTは本来、職場で先輩がマンツーマンで指導する手法
  • Off-JTは効率的だが実務感覚は得にくい
  • IT業界では理想のOJTはほとんど存在しない
  • SESは「マニュアル+課題+ハンコ方式」が一般的
  • 大手は仕組みはあるが人の育成は薄い
  • 受託/Slerは現場によって質が極端に違う

一番大切なのは、「OJTなら大丈夫だろう」 と言葉に期待しすぎないことだと思います。
環境に頼るのではなく、自分が本当に実現したいことに向かって学び続けること。
結局はこれに尽きる――僕はそう感じています。